無料相談受付03-5217-2288

受付時間 9:30〜17:45
土日祝・長期休暇除く

TOPICS トピックス

副業による所得がほかの所得と通算できる条件が厳しくなります

1.はじめに

令和4年8月1日から31日の間に国税庁は所得税法基本通達の改正案に関する意見を公募しました。令和4年度の確定申告より副業収入が300万円以下の場合には事業所得ではなく、原則として雑所得になるという所得税基本通達の改正案を公表したところ、反対意見が多く、SNS等の影響もあり、国税庁の意見募集(パブリックコメント)へ通常の70倍ほどの数である7,059件もの意見が寄せられました。このパブリックコメントを踏まえ、令和4年10月7日に国税庁は修正内容を公表しました。

修正内容は収入金額による基準ではなく、基本的には帳簿の有無で雑所得か事業所得かを判断するという内容になっています。 今回はこの修正内容について解説いたします。

2.雑所得とは

そもそも雑所得とはどういうものが該当するのか、ご説明致します。

所得税上、所得の区分は十種類に区分することができます。十種類を列挙すると下記の通りになります。
➀利子所得、②配当所得、③不動産所得、④事業所得、⑤給与所得、⑥退職所得、⑦山林所得、⑧譲渡所得、⑨一時所得、⑩雑所得、となります。
そのうち雑所得とは先にあげた九種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。

3.損益通算の対象となる所得の範囲

事業所得と雑所得との大きな違いとしては、事業所得には青色申告控除、損益通算の規定等、事業所得に該当した場合には所得の計算上有利に計算できる規定が多く存在致しますが、雑所得にはこれらがありません。その中で今回の改正の発端になった損益通算についてご説明致します。 損益通算とは、原則として下記記載➀から④の所得の計算上生じた損失についてのみ、一定の順序にしたがって、他の各種所得の金額から控除する制度のことです。

➀不動産所得・・・不動産、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得をいいます。

②事業所得・・・商業・工業・農業・漁業・自由業など、一定の規模を持つ事業から生じる所得をいいます。

③譲渡所得・・・事業用の固定資産や家庭用の資産などを売った所得をいいます。

④山林所得・・・五年を超えて所有していた山林を伐採して売った、又は立木のまま売った所得をいいます。

損益通算をすることができる所得が前述の4種類の所得に限定されている為、雑所得に該当した場合には損益通算の規定を適用することはできません。

4.所得税基本通達の修正の解説

意見募集の段階では、副業の収入金額が300万円を超えない場合は「雑所得」になるとされていた所得税基本通達改正案について、

事業所得の場合には、青色申告の特典や、損失を他の所得と相殺できるなど税金計算上有利になるため、修正前の改正案では一律に収入金額で判断されて雑所得にされてしまうと税負担が大きくなるということで反対意見が殺到していたところから、下記の内容の修正が行われました。

修正後は、収入金額が300万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、概ね事業所得に区分されることとなります。ただし、帳簿の保存があっても、①収入金額が僅少と認められる場合(300万円以下で主たる収入の10%に満たない場合)や、②営利性が認められない場合(例年赤字で、解消するための取組をしていない場合)には事業所得とは認められないこととなります。

5.まとめ

令和4年度の確定申告に関係する所得税基本通達の一部改正の解説をさせて頂きました。
副業を推進する政府の方針があり、今回の改正については影響がでる方は多くいるかと考えられます。紙面の都合上ご説明しきれない部分もございますので、ご不明な点がありましたら、弊所担当者までご連絡ください。

文責 吉澤 駿

PAGE TOP